Someday My Prince Will Come

変わりなく過ごしている。

職場では様々な事件が勃発し、プライベートはごく平穏、カウンセリングでは冒険をし、自助グループやオンライン勉強会や講座で仲間と学び合う。

そういうパラレルワールドを行き来するような日常が続いている。

だから毎日色々なことがあるのだけど、

毎日ジャーナルを書くようになって、ここに書けないことを備忘録的に書き留めるようにもなり、ここに書くモチベーションが下がってしまっていた。

 

でも、私のブログを更新されていない時も読み返しているんですよとある人が言ってくださって、

とても嬉しかった。

私は他に得意なことがないけれど、昔からおしゃべりだけは得意だった。

自分の感じたこと考えたこと体験したことを、いつも誰かに伝えたくてたまらなかった。

私の言葉が、声が、誰かに届くということを、私は今もとても不思議に思える。

こうやって文字に置き換えることで、私のおしゃべりは時空を超えることができる。

目の前にいる誰かだけでなく、多くの人に伝えられる。

それが嬉しくて、きっとこうやって私は文章を書き続けるんだろうと思う。

いつだって私は、伝えたい何かを持っている。

私はいつも世界を新鮮に感じ、その感動を言葉にして伝えたくなる。

多分それは私の原動力なのだろうと思う。

そしてそれは、なかなかよいもののように思える。

 

 

言葉にすることは、言葉を大切に扱おうとすると、安易にはできなくなってしまった。

そうすると、言葉にできないことが増える。

ジャズバーで音楽に感動をすると、言葉を失ってしまう。

言葉にならなくても、私は音楽を聴きながら様々なことを考え、様々な体験が結びついて、イメージが膨らみ、新しい洞察が生まれたりする。

いつもの席に座りステージを眺めながら、音に身を委ねながら、私の心は遥か遠くへ飛んでいく。

私のパラレルワールドたちが、一体となるのを感じる。

私は自由だなと思う。

 

ジャズバーにいると、気づけば、職場で出会う人々のことを思っている。

ある夜 Someday My Prince Will Come が演奏された。

ピアニストのHさんに、後で私は「あのお姫さまは、自分で自分の楽しみを見つけて、どんどん駆け出していくようなお姫さまでしたね。来るかどうかもわからないような王子さまを待ってたりしないですね。すごくかっこよくていいなって思って聴いていました。」と言った。

Hさんは笑いながら「そうでしょ。王子さま逃げ出すわよ!」と仰った。

この方は、自分の人生を切り拓いて生きてきたんだろう。

力強かったり、キラキラして光ったり、どっしり重かったり、こんなにピアノの音色ってたくさんあるんだと知った。

演奏からも、Hさんの活動からも、お話ししてくださる言葉からも、私は、

本当に素敵な女性だなと思った。

 

Hさんに言わなかったことがある。

私は私の職場で出会う彼女たちに、こんなお姫さまになってほしいなと思ったということ。

誰かに幸せにしてもらう夢を追わないでほしい。

誰かに幸せにしてもらえなかった過去を手放して、新しい自分の人生を作っていってほしい。

白雪姫の呪いを解いてほしい。

王子さまに幸せにしてもらうんじゃない。女性だってみんな、自分の足で立てるんだよ。

自分で自分を幸せにしてほしい。

自分の世界を拡げていってほしい。

能力の限界を理由にして、自分の理想を描くことを諦めないでほしい。

できるだけ得をするようにとか、損をしないようにとか、そんなこととは関係のない、自分の良いと思う物語を生きてほしい。

そのために、私たちは現実的なお手伝いをさせてもらうだけだけど、

本当は私は、その人らしい美しい物語を作っていくお手伝いができたらと願う。

 

そんなことを聴きながら思っていて、泣きそうになっていた。

現実と理想は、私が思っていた以上にかけ離れているようだった。

すると突然トランペットの明るい音色が響いた。

私の心はステージに戻ってきた。

違う楽器、違う人生、違う年齢、何もかも違う人々が、こうやってひとつの曲を奏でていることを思った。

この瞬間は、今にしか存在しないことを思った。

音を奏でていない私も、この場で、この音楽を共にしていることを思った。

私たちは同じ時空を共にしながら、まったく違うことを思っているだろう。

でも、私たちはここに心地よく所属できている。

音楽は人々をひとつにする。

この現実は、理想よりも遥かに理想的な不思議なことだ。

 

音楽は、人生を豊かにする。

それは落語でもいいし、絵画でもいいし、踊りでも、小説でも同じだと思うけれど、

誰のものでもない自分の人生を楽しむことができる。

食べること、子どもたちの楽しめること、物質的に不自由のないこと、それらを、

必需品だけではなくて、母親たち子どもたちにとって少しでも良い環境を作ろうと思って、

私たちは様々に工夫をして提供しようとしているけれど、

でも本当に人生は豊かにできることを、伝えられたらいいなと思った。

地を這うような視点から、明るい空を見上げられるような、そんな勇気を持ってもらえたらいいなと思った。

私に何ができるかはわからないけれど。

 

私も、自由だ。

あの弾むような駆け出していくようなお姫さまに、私も近づいているように思う。