吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』は大学生のときに読んで、自分に子どもができたら読ませてあげなければと思った。
まだ自分が母親になるなんて想像できない日のことだったけれど。
昨年、長男に勧めてみたら読み始めてくれた。彼には珍しく、途中で止まってしまったようだったけれど。少し読みにくいのは確かだ。
2ヶ月ほど前、次男に勧めてみたら、読んでというので、読み聞かせを始めた。
相当読み聞かせには向かない本ではあるが、少しずつ進んで、今3分の1ぐらい読んだ。
どこまで理解できているかわからないが、次男なりに楽しみながら、受け止めてくれている。
この本で叔父さんがコペル君に語りかけ、コペル君が体験し言葉にしていく人間同士のつながり、社会の仕組み、友情、勉強する意味、貧乏についてなど、感想を述べてくれる。
友だちとのエピソードは劇的な場面も多く、長男は隣で私の言葉に合わせてぬいぐるみを操る。
「3D化されててめちゃわかりやすい!」と次男に好評だ 笑
叔父さんが中学生のコペル君に、真剣に向き合って、ノートに手紙を書く。
人として学んでいくべきことを、あたたかく熱く書いてあり、こんな大人が側にいてくれたらと思う。
流石にノートの部分はひじょうに抽象的なものなので、ぬいぐるみ劇化はできないが、次男も熱心に耳を傾けてくれる。
大人は大人らしくなければならないなと思う。
それは、自分が親であるかどうかとは全く関係なく、子どもたちを育てていく役割を担い、
子どもたちに学びを伝えていく過程で、若者は大人になっていけるのだろう。
人間の歴史は、文化は、学問は、技術は、そうやって大人から若者へ、子どもへと手渡していくことで続き、発達してきた。
そうやって人間は生き延びてきた。
私たち大人が子どもたちに対してすべきことは、決して彼らを甘やかすことではないとあらためて思う。
子どもたちは先の見えない未来を切り拓き、自分たちの手で世界を作っていかなければならないから。
そのための勇気を持ってもらえるように、大人は子どもたちを愛し、たくさんのことを伝えていかなければならない。
今日は前々から約束していた通り、子どもたちと3人でジブリの『君たちはどう生きるか』の映画を観に行った。
(以下、少しネタバレを含みます。)
次男が観に行きたいと言ったから。
どんな映画なのかという告知が一切なかったそうで、私は口コミを見て大体のところを把握した。
賛否両論、真っ二つに評価が分かれている。
あの本とは内容が全然違うらしい。
戦争の話らしい。
お母さんが死ぬらしい。
それでもいいの?と聞くと、ふたりともちょっとだけためらったが、
「まあ、お母さんと観に行くなら心配はない」とのことで、観に行くのを楽しみにしていた。
仕事の都合で、今日行くなら夜。明日なら日中観に行けるけどと言うと、夜に行こう!と、意気込んでいた。
早めに夜ご飯をすませてから、ますます非日常感の増す、レトロな映画館へ。
感想はまたあらためて書くような気がしている。
3人で観に行けてよかったなと思った。
映画が終わったとき、次男が「あー、オレ、ジブリでこれが一番好きだわー」としみじみ言った。
長男もすごく良かったと言っていた。
私も、同感だった。
私がこの子どもたちの母親でいれて、本当にありがたいなと思えた。
生きていくのは辛いことがたくさんあって、でも自分でそれらを乗り越えて行かなければならない。
他人から見れば何も起きていないようだとしても、本人にとっての大冒険、大変化が、このありふれた日常の中に起こっている。
その冒険は、大変だけれど、決してひとりの冒険ではない。
そんなこと。メッセージとして受け取った。
そういう意味では、元の本『君たちはどう生きるか』のメッセージと、私には同じだと思えた。
それから、この元の本も、とても印象的に映画の中に登場していた。
私たち3人にとって、それはとてもとても嬉しいことだった。
なぜかということは、これから映画を観られる方のために秘密にしておく。
宮崎駿の今までの映画に散りばめられた、彼の好きなものたちがコラージュされていた。
真っ暗な帰り道、3人で、あの場面は、あのキャラクターは、あの仕掛けは、あのイメージは、
それぞれどの映画のようだったかということをおしゃべりしながら歩いた。
色とりどりのガラス片を並べて、ひとつのモザイク絵を作っていく作業のようだった。
そう、この映画に絶対的全体論的世界を感じてしまったのだった。
昨年末頃から、象徴を読むということを勉強し始めている。
絵画だったり、タロットだったり。
それから、映画についての本も読んだりした。
私は今まで、映像作品を観るとき、物語の筋を追うことがメインだったと思う。
いや、映像の美しさを楽しみ、音楽に浸っていたけれど、
シーンに込められた意味や、隠された意味や意図というものを、ほとんど感受できずにいたと思う。
今回、そういう視点も持って初めて映画を鑑賞することができた気がする。
だから、今回のこの記事のタイトルは、Tower。
予期せぬ出来事に遭遇し、窮地に立たされる。
破壊と再生。
思春期って、若者って、そういう時期だ。
長男にエールを送りたい。
いつでも私は、あなたの側にいるよ。