今日も子どもたちと一緒に近所の公園に行った。
ブランコとすべり台と小さな砂場と、あとでっかいバネのついている動物の乗り物が端っこに点在している、
広い芝生の公園だ。
昨日も0歳〜3歳ぐらいの子ども連れのお母さんお父さんが多かった。
今日は幼稚園ぐらいの子たちもいた。
お父さんたちは、特に女の子のお父さんたちは、とろけそうな顔でお姫さまたちと遊んでいた。
時々私の弟から送られてくる写真も、同じような様子である。
女の子は、可愛い。
男の子の可愛さとは別種の可愛さである。
うちの子たちはブランコに走って行って、いつまでもいつまでも漕いでいた。
20分ほど漕ぎ続けただろうか。
それからバネの動物たち(幼児用)で激しく遊んで、
それから次男は砂場に行きたいと言って、私を連れて行った。
小さな砂場には幼稚園年長の女の子が2人、お喋りしながら熱心に砂を掘り返していた。
近くのベンチにお母さんたちが座っている。
次男は遠巻きに見ていたが、グルグル回りながらだんだんと距離をつめていく。
トンビか。
ふと、大きい男の子が2人、サッカーボールを抱えて公園に走って来た。
「あ!あの子友だちだよ!」と次男は駆け出して行った。
後で聞いた話によると、同じ学校の2年生と3年生で、ひとりは学童で一緒の仲良しらしい。
するとサッカー大好きの長男も駆け出して、
少しの間、4人でサッカーをしていた。
これはまだまだ帰れないなとあきらめた私は、空いているベンチを見つけて腰を下ろした。
ふと見ると、サッカー少年は3人になっており、
次男は砂場で女の子たちに混じって砂を掘り返し始めていた。
これはますます帰れないなと思って、その後45分ぐらい、私は彼らをぼーっと眺めて過ごした。
長男は自分の身に付けたあらゆる種類のキックを使って、男の子たちと遊んでいた。
高く、遠くまでボールを飛ばせるようになっていた。
ずっと走り回っている。元気だ。
3人ともボールを受け止めきれないと、笑って走る。
時々小さい子の近くにボールが来そうになると、お父さんたちが蹴ってくれる。
そうだ、私の父もこんな感じだったなと思い出した。
子どもたちが小さい頃はよく公園に連れて行っていたけれど、
次男が幼稚園に入ってからは、私が一緒に行くことはほとんどなかった。
もう少し一緒に遊びに行ってあげたらよかったなと、珍しく後悔した。
でも、天気のいい日はこうやってまたここに来ればいいんだ。
長男ももう少しは、つきあってくれそうな気がする。
私もここにいる親たちと同じように、普通のお母さんに見えているんだろう。
普通であることは、かけがえのない幸せだと思う。
普通のお母さんをさせてもらえて、本当にありがたく思った。
次男と一緒にいる女の子たちが、私の方を見ていた。
私が手を振ると、次男もこっちを見た。
次男は女の子たちのスコップを借りて、砂場の砂を盛大に掘り返して、大きな砂山を作っている。
何度か私の前をちらちらと見ながら女の子たちが通っては、砂場へ返っていく。
にこにこ見ていたら、意を決してひとりの子が話しかけてくれた。
「あのね、だあれ?」
「私?私は、砂場にいる水色のTシャツ着た男の子のお母さんだよ。」
「あ、やっぱりそうなんだ。あのね、マスコットをお砂場に隠したんだけどね、見つからなくなっちゃったの。」
「へえー。マスコットってどんなの?」
「あのね、これぐらいの。ぜんいつと、たんじろうが見つからないの。」
「それは大変だね。小さいんだ。」
「うん。公園にいる子みんなで探してほしいって思うぐらい、たいへんなんだ。あの子も一緒に探してくれてるの。」
「あ、そうなんだ。見つかるといいね。」
「うん。もうちょっと探してみる!」
そうか、次男は仕事を見つけたんだ。
砂場の砂をすべて掘り返すのは、幼稚園時代の彼の任務のようなものだったものね。
3年間掘り返し続けた技をここで役立てたのだ。
そろそろ帰ろうという雰囲気に公園中すべての親がなった頃、
私も砂場へ近づいた。
「一緒に探してくださって、ありがとうございます!1個見つけてくれたんです!」
と急にお母さんたちから話しかけられた。
動揺する私。
「え?あ、そうなんですか、お邪魔してなかったですか?」
「いえいえ!一生懸命探してくれて…ねえ!」
「ほんと助かりましたよ〜」とお父さん。
「なんか、お友だちだそうで」
「あ、そうなんですね。お友だちだったんだ、しゅんすけ」
「え?友だちじゃないよ」と照れて立ち上がる次男。
「そんなハッキリ言わんでも…」と苦笑いするお父さん。
「一方通行だったか」と笑うお母さんたち。
「いや…別に…」と照れて次男はブランコへ走り去った。
うー暑い〜と、汗だくの長男もブランコにやって来た。
あとちょっとだけ!と言って二人はブランコを漕いだ。
「ほら、お兄ちゃんにありがとうって行っておいで」とお父さんお母さんに言われて、女の子が近くに来た。
「ありがとう。」と私に言う彼女。
「いいえ。遊んでくれてありがとう。」
にっこりして立ち去る彼女。
「あら、お兄ちゃんには?」と言われている。
そんなのさ、難しいよね。
「お兄ちゃん、バイバーイ、ありがとうねー!」とお母さんたちに言われて、満更でもなさそうだが照れ臭そうな次男。
「何々?何があったの?」と長男。
「砂場に埋めて見つからなくなったマスコットを、探すの手伝ってあげてたんだって。」
「へえ。砂場でそんなことしてたんだ。」
話しながら帰っていると、女の子たち家族が後ろから歩いてくる。
「あれ?家同じ方向なのかな?」と次男。
振り返って女の子を待っている。
「あのね、私のお家、こっちなの!」
ふたりで走り始めた。
「ぼくんちはね、こっちだよ!こっち来て!ほら、あの黒い建物見えるでしょ、あの向こうにあるアパートだよ!」
「あら、家紹介してるわ」と爆笑するお母さんたち。
「うちもすぐそこなんですよ。」と私。
「じゃあ、登校班も一緒ですね、きっと。うちは来年1年生なんです。よろしくお願いします!」
マスクしていなかったので、何となく距離を取りながら、それではまた〜と言ってさよならしたんだけど、
女の子たち家族がお家に入った後、
ちょっと困ったなと、3人で顔を見合わせた。
長男「ぼくたち違う学校だよね。」
次男「うん。」
長男「完全に、小学校になったら毎朝会えるって思われちゃったよね。」
次男「うん。」
私「運が良ければ会える、森の妖精みたいな存在になっちゃうね、君たちは。だってここには住んでないもんねえ。」
長男「あー、トトロみたいなもんか。」
次男「ま、でもまた公園に行けば会えるでしょ。お家はわかったんだし。」
帰宅してから、ずっと歌を歌って上機嫌の次男。
私は君の恋を応援しますよ。