ホスピタリティ

たくさんの人々の生活を共にする私の仕事。

ひとりひとりの子どもたちとも、利用者さんたちとも、幾つもの物語を編んでいる。

 

昨日も今日も信じられないような予想外の展開が3つずつほどあって

勤務の職員同士で、目を見開いて「え?なんで??なんでそうなるの??」と、

互いにしばらく呆然として顔を見合わせ、笑うしかないという状態を繰り返した。

 

大変なことが起こる度に、職員同士で協力して立ち向かわなければならない。

そうやって私も仲間になっていっているのを感じる。

とてもここの仕事をこなすことは私にはできないと思えてしまうと夏頃にこぼした時、

みんな修羅場くぐってきているからね、と上司が言ってくれた意味が、今は少しわかる。

職員のみんなはそれぞれに素敵なところがたくさんあって、得意なことも苦手なこともそれぞれ様々にあって、

それらが良いように働いたり悪いように働いたりしながら、でもみんなの力で目の前の仕事をやっつけていっている。

ここでの仕事の中で、私が得意なことはほとんどないけれど、でもどうにかこなせるようになってきた。

 

 

 

イレギュラーな仕事が、新規入居者さんや、緊急一時保護入所者さんが入られることに決まると発生する。

部屋を掃除し、設備を点検する。

カーテンをかけたり、冷蔵庫を設置したり、洗濯機を設置したりもする。

緊急一時保護の部屋の場合は、布団にカバーをかけたり、シーツやタオルの用意もする。

DIY好きで掃除好きの所長は、「ここ、もう少しだけきれいにしといてもらえますか?俺だったらこれは嫌だから…」と言って私に掃除を割り振ってくださる。

そして所長ご自身は、暑かろうが寒かろうが、ベランダに水を撒いて掃除をされたり、棚板を付け替えたり壁紙を張り替えたり忙しくされる。

 

うちの施設には人間が暮らしていくためのものが全てそろっているのだ。

それらは、時間の空いているときに職員が買いそろえているからで、

私はマクゴナガル先生と布団や布団カバーやタオルケットや洗濯かごなどを買いに行ったことがあった。

「この色、ちょっと落ち着かないわよねえ…」

「もうちょっと分厚くないと、寒いと思いません?」

「なんかもう少し使いやすい大きさの物ないかしら…」

限られた予算の中で、少しでも良い物を選ぼうとされていた。

 

どんな人が来るかわからない、どれほどの期間使われるかわからない、仮住まいの部屋を整える。

様々な事情で不安をいっぱい抱えて逃げてくる人たちに、少しでも快適で心安らいでもらえるように。

私たちはいつでも人々を迎え入れられるように、待っているのだ。

所長やマクゴナガル先生のあたたかい気持ちを、私は素敵だなと思えて

私は入所前の掃除を、ありがたくさせてもらう。

心を込めて掃除をする。

 

 

 

入って来られてしばらくして、ここの生活に馴染んでこられると、

互いにここが仮住まいであることを忘れがちになる。

でもここは通り過ぎていく場所なのだ。

そんなことを、新しい入居者さんを迎える掃除をさせてもらう度に思う。

 

異動のある職場なので、職員も春になれば入れ替わる。

せっかくこのメンバーで仕事をしていくことに慣れて、仲間になれたけれど

あと2ヶ月も経たずに、誰かとはさようならをしてしまう。

 

変わらないことなんてないのだ。

そうであれば尚更少しでも、良い関係を作って、良い時間を過ごしていけるようにしたい。