今日は午後から出勤だった。
不規則な時間の勤務は、予定が立てにくいことが難点だが、私は実はとても好きだ。
毎日毎日同じ時間に起きて、同じ時間に同じ行動をするというのが苦手なのだ。
毎日毎日、ほぼ同じ出勤時間が続くことがないこの仕事は、それだけでとても楽しい。
私はいつも刺激を求めているんだろう。
毎日毎日、何が起こるかわからない。
子どもたちとの暮らしは、そういう刺激にあふれている。
さて今日は、初めての失敗をした。
今日はとても良いお天気で暑かったので、私のかくれんぼ仲間の小学低学年のふたりは、一緒にかくれんぼをするのに飽きると、手洗い場のホースで水遊びを始めた。
裸足になって2人できゃあきゃあやっていたので、私は高学年や中学生に誘われて、すぐ隣の芝生でサッカーを始めた。
しばらくすると、虹〜♪とか言ってシャワーで弧を描き、その下をくぐり始めた。
濡らさないように気をつけてねーと言っていたのだけど、
案の定、服にかかった。
テンションが上がったふたりは、「ええーい!」と頭からホースの水をかぶり始めて、
あっという間に頭の先から足の先までずぶ濡れになった。
「うわーずぶ濡れじゃん!お着替えしなきゃ!」
「もっと遊ぶー!」
「いやー、まずお洋服変えよう。風邪ひいちゃうと思うよ。」
「大丈夫だよ〜」
大きいお兄さんたちは、小さいふたりの惨状を見て、
音もなく庭から消えて行った。
やばい、この子たちやり過ぎだ、怒られるぞ!という気配を察知したのだろう。
しかし私は、感情を使うことの無意味さを知っているから怒ったりしない。
でもおそらくこれは怒られる事件だよねってことはわかった。
そのままでは建物の中に入れないから、とりあえずタオルとか持ってくるね、ちょっと待っててねと言い残して、
私はビクビクしながら先輩スタッフの指示を仰ぎに行った。
案の定、ちゃんと見ててくださいよ!という言外の圧を感じながら指示を受けた。
急いでタオルとビニール袋を持ってふたりのところへ戻った。
寒いと言い出すふたり。
そりゃそうだよね。いくら暑いとは言ってもまだ4月。
着替えに行こう、と言うと、こっくりした。建物に連れて入った。
建物の中はひんやりしている。
自分で着替えられると言うので、ビニール袋を渡して、交代でひとりずつ部屋に入り、もうひとりと私は扉の外で待つ。
廊下の陽だまりを探して、ふたりで座った。
「寒い。」
「そうだよね。まだ春ですから。」
「夏だったらよかったー。」
「そうだね。水遊びは夏にするのがいいねえ。」
「あ〜寒い!」
「タオル、服の中に入れてみる?」
「うん。あ、あったかい。」
「どんなことを学びましたか?」
「えー?今日は宿題してないよ。」
「宿題じゃなくってね、水遊びのことから、どんなことを学んだ?」
「えっとね、…わからない。」
正座をして、私の目をまっすぐ見つめてくれた。
落ち着いて考えようとしてくれていることを感じた。
「水遊びは、これからどんな風にしたら良いと思う?」
「えっとね、服にかからないようにする!」
「それは良いですね!お願いします〜」
「うん!」
もう一度3人で外に出ると、お兄さんたちの姿はまだなかった。
ホースをお片付けしようか、と言うと、ふたりとも、一緒に片付けてくれた。
虫捕まえよ!とふたりが遊び始めてしばらくして、どこからともなくお兄さんたちが現れた。
周りのことがよく見えている子たちだ。
他の子と遊んでいた上司に、すみませんでしたと頭を下げた。
「いいんですよ。ただ、あの子たちは、ちょっとやり過ぎちゃうところがあるので、そうね、ちょっと気にしておいてもらう方がいいかも。」
「はい。自分たちでもやり過ぎたって思っている様子でした。」
「ああ!それならいいんです。よかったよかった。」
失敗から学ぶということを、上司も大切にしておられることがわかって、ほっとした。
探検ごっこするよ!と、私の手をとった小さい手は、すっかりあたたまっていた。
風邪はひかなかったみたい。本当によかった。
自然の結末を体験してそこから学ぶということを、図らずも実践することになった事件だった。
子どもを預かっている職場でこれを実践するのはとても勇気がいるのだと知った。
先輩の目は怖い 笑
でも、子どもたちは本当にしっかりと学んでくれたように思えた。
なんと今日はこの事件後も、ふたりは手洗い場で水を使って遊び始めたのだけど、そのときはちゃんと服が濡れないように、気をつけて遊んでいたのだ。
もうホースは触っちゃダメ!とか、水遊びするときは気をつけるように!とか、まったく言わなくていいんだって、私は学ぶことができた。
水遊びをする勇気をくじくことなく水遊びの仕方を学んでもらえて、本当によかった。
私は多分に、子どもに甘いように見られているだろう…
そのうち先輩からご指導いただくかもしれないけれど、
その時は先輩の良い意図をきちんと理解して、はいわかりました!と言おう。
でも一番大切なのは、私と子どもとの関係を良い状態で保つことと、子どもに学んでもらうことだ。
怒ることは副作用しか生まない。
落ち着いて、話し合いをしよう。
開いた質問を適切に使えば、子どもたちはちゃんと自分で考えてくれる。
次遊ぶときには、今日学んだことを忘れてしまっているかもしれないけど、
それでもかまわない。
何度でも何度でも、話し合いをして、体験して、失敗して、やがて身に付けられるように学んでいってもらおう。
子どもと過ごすと、毎日が新しくて刺激的だ。