私が少し落ち込んでいたりするとすぐに気づいてくれる友だち。
離れていても、メールでも、電話でも、あるいはこのブログでも、
私の様子を気にかけ、思ってくれているのがとても嬉しい。
そしてそんな友だちが、私には本当にたくさんたくさんいてくれる。
職場ではどうしようもないことが続いていて
ささやかなやり取りに幸せを感じやすくなっている。
ささやかなあたたかいやり取りを重ねていくことしか、今の私にはできない。
「今の私にはできない」って、私がよく使う言葉だ。
これは、私がいずれもっと能力が高くなってもっと成長して、
「いつかの私ならできる」という未来を前提とした物言いだ。
でも、今の私にもできなければ、未来の私にもきっとできないだろう。
このどうしようもない事態を打破することは。
私は、落ち込んではいる。
でも、この陰性感情は怒りではない。悲しみだ。
とても静かだ。
人を変えることはできない。
理想の行動を人にさせることはできない。
それをさせようとしているとき、既に私は自分のことを考えている。
やんちゃな幼い男の子たちを、どうにかして言うことを聞かさなければとみんなが相談していた。
このままでは本当に困る。我々も困るけれど、本人が周りに適応できなくなっていく。
だからもっともっと、しつこく言い続けなければいけないですね。
でもダメって言うたびに、ニヤッと笑って、余計にひどくし続けますよねあの子たちは。
そうなんですよ、絶対に言うことと反対のことするんですから。
どうしたらいいんでしょうね。
でも知能は結構高いですよね。
そう、よくわかってますよ。どうしたらいいんでしょう。
繰り返し繰り返し言い続けるしかないですよね。
…
私はひとり黙って、ため息を隠していた。
そうやって不適切な行動に注目関心を与えていたら、
もっともっと彼らの不適切な行動はエスカレートしていく。
彼らはいい子なんだって信じて、きちんと話し合えば協力してくれる仲間だって信じて、
彼らのいいところを探し続けて伝え続けなければ、この悪循環は回り続ける。
その仕組みを私は知っているけれど、言えなかった。
不登校を続けている思春期の女の子たちを、どうにかして学校に行かせなければとみんなが相談していた。
どれだけ内線かけても出ないってどういうことなんでしょうね。
部屋に行ってベル鳴らしても反応がないし。ドアを開けて声かけても反応ないし。
入るよって言ったら入ってくんなって言うし。枕元まで行ったけど布団かぶって起きないし。
入ってくんな、うるさいって言うし。
一度で内線に出ないからでしょって言ったけど、全然布団から出てこないです。
ほんと、どうしたらいいんでしょうね。
何回も何回も言い続けるしかないですよね。
…
この悪循環はもう加速度を増すばかりで、弾け飛んでしまいそうだ。
でも私はひとり黙って、ため息を隠していた。
職場のみんながどれほどの大きな愛情を持っているかは、十分わかっている。
でもこの方法では、事態は悪化する一方だ。
今まで、どうやってきたんだろう。
これでうまくいったことがあったんだろうか。子どもたちの方が負けていたのだろうか。
何かの拍子に、あるいは時間の力で、子どもたちが成長して悪循環が断ち切られたのだろうか。
…肝心なことは書いていない。
こちらが正しくてあちらが間違い、悪いという構えでいると、決して対等で平等な横の関係は、協力し合う関係は作ることができない。
だから私は、職場のみんなのことを裁いていては、始めることができない。
だから私は、感情を動かさない事務的なことでしかみんなと協力ができていないのだろう。
全てが全てではない。
本当にあたたかい勇気づけをしている職員さんもいる。
素敵だなと思うこともたくさんある。
でも、それは、とても良い子たちに対してだ。
それはもちろん悪くなんてない。
でも、不適切な行動をしなければ所属できないって思い込んでいる「悪い子」たちにも、あたたかい勇気づけが必要だ。
私がほんの小さな勇気づけをしたことを、私は友だちに話す。
それは素敵だねと言ってもらうことで、こうやって自分にできることを重ねていこうって思える。
表情が和らぎ、強張っていた体から力が抜け、じゃあやってみようかなって言われる。
そういう変化が起こった瞬間だけは、私はその相手と手を繋いで平等の平面に立っていられたんだと思う。
それがどんなに不適切な行動をしている相手であっても、私は相手を裁かない限り、協力することができると、
信じてみたい。
まだ些細なことでしかできないけれど。
ああ、また私は「まだ」なんて言葉を使っている。
これからもっとできるようになるっていう前提があるようだが
そんなことはないんだ。
私がどれほど知識を身につけ技術を磨き人格を高めたとしても、どれほど祈っても、
彼女たちは子どもたちを酷い目に遭わせ続けるだろう。
子どもたちは不適切な行動をし続けるだろう。
職員は逆効果な働きかけをし続けるだろう。
そうやってみんなで悪循環の輪を回し続けるだろう。
私はその回転の中に佇みながら、小石にぶつかって軌道が変わるような、そんな機会をうかがおう。
私にできることは、私のすべきことは、
相手の良いところを見つけて、伝え続けることだ。
私はあなたの味方でいるよと心から思いながら。
相手と共に今ここに生きていることを、喜ぶことだ。
他に私にできることがあれば、どうか教えてほしい。