手を振った

昨日と今日は早番で、7時からの勤務と6時からの勤務だった。

陽が登るのがだんだんと遅くなってきた。

冬に向かっている。

しかし早朝の澄んだ空気は好きだ。

 

早番は、子どもたちを起こして回るという業務が忙しい。

みんな、起きようと思っているから、職員に起こしてもらったり送迎してもらったりという登校支援を依頼してくれている。

そのことの適切な側面を、だんだんと見れるようになってきた。

人が苦手という子が、私含めた職員には、自室に入ってくることもOKできるのだ。

ここで良い関係を作れることが、きっとこの子の社会性を育むことに繋がるだろう。

 

いつも起こしに行っている中学生女子。

昨日、4限から行くから送ってと言われた。

出かける10分前になって、準備できているかなと怪しく思って内線をすると、出ない。

マズいぞと思って訪室した。

やはり、熟睡している…

「Nちゃん!11時20分だよー!」

「え?…ああっ」

びっくりして目を覚まして、ショックを受けて、もう一度倒れ込んだ。

「あー…もう今日は休む…。でも明日は絶対朝から行くから!」

「わかった。」

「あのな、明日はテストだから1限から行かなきゃダメ。だから明日は精一杯起こして!」

いつもこちらは精一杯起こしてるよと思って笑ってしまった。

でも、そうね、今日も明日についても、あなたが精一杯行こうと思えたのが素敵だよ。

「わかった!明日の朝私精一杯起こすから、Nちゃんも精一杯起きてよ!」

「うん、頑張る!」

Nちゃんとは、まだお互いにぎこちなく会話をする距離感だが、笑って応えてくれた。

自分の果たすべき責任を、彼女は人に転嫁しがちだとは思う。

でも、彼女がそうするのは、甘やかす支援をしてきたこちら側の責任でもある。

少なくとも私との関係の中では、彼女に責任を果たすことを学んでもらいたい。

小さな小さなことだけれど。

 

そして今日、6:30に内線をかけると

やはり出なかった。

ヤバいと思って訪室した。

声をかけると、「ん!起きた!」とすぐに目覚めた。

「良かった!次の声かけはいつしたらいい?」

「いや、もう声かけしなくて大丈夫。」

Nちゃんは布団の上に起き上がった。

「オッケー!じゃあ降りてきてね。待ってるね。」

「うん。」

Nちゃん頑張ったなあ!すごく嬉しくて事務室に入りみんなに報告した。

「すごいが〜♪」「素晴らしい!」「良かった!」

我々、こんなことで大喜びしてハードル低すぎちゃうかと思うけれど、でも本当に嬉しかった。

Nちゃんは7:50に降りてきた。

「Mさん、Nちゃん送れる?」と先輩職員さん。

「はい、行ってきます!」

事務室の窓からNちゃんに手を振って、駐車場へ向かった。

「1限間に合うね、素晴らしい!」

「うん。あのな、8:15に教室に入れるように行って。」

「わっかりました!」

偉そうな言い方だなと思いますよ。

確実に遅れないで行けるように、もっと早く降りてくるべきだとも思う。

でも私が運転不慣れで、遅いのも確かなことなのだ。

しかもこの時間帯は、いつも遅刻していく彼女を送る時間帯よりもずっと道が混んでいる。

いいのです。彼女の言い方についてはいつか、もっと良いタイミングにお話しできたらいい。

今は、Nちゃんが朝の会までに教室に入ろうとしていることを喜ぼう。

学校付近で「あの曲がり角の辺りで下ろして。その方が早いから。」

「わかった!じゃあここで。頑張ってね!いってらっしゃい!」

「うん。」

Nちゃんは笑顔を見せて、私に小さく手を振り返してくれた。

手を振ってくれたの、初めてだった。

 

 

帰宅時間が遅かったり、共有スペースの使い方に問題があったりする女子2人。

先日もまた追いかけっこになってしまった。

共有スペースの利用時間が過ぎている20時。

3階のエレベーターホールで、最近2人はお菓子を食べたりスマホ使ったり、悪い子をしている。

3階に着くと、誰も見えない。

しかし階段を上る私の足音を聞きつけて、エレベーターの反対側の廊下へ回り込んで誰かが息をひそめている雰囲気を感じる。

エレベーターの前で私は黙って待っていた。

「あ!」

姿を現し、笑い転げるふたり。

「もー笑わせんでー!あ、これでわかったんだろー」

エレベーターの横の棚に、コンビニの袋が2つ突っ込んである。

「そうです。お部屋に帰ってください。Yちゃんは2階でしょ 笑」

「はーい」

「はーい」

笑いながら、ふたりが部屋に入るのを見届けた。

こないだ、先輩職員さんの不評を買ったけれど、不適切な行動に注目をしないで良かった、と心から思った。

 

それから以降、ふたりの悪い子たちは

コンビニ行くから自転車の鍵貸して、など、私に話しかけてくるとき、笑顔で話しかけてくるようになった。

私だって悪い子な中学生女子だった時代もあるもの。

あなたたちの悪い子程度なら、かわいいもんだと思う。

この環境で、その程度の悪い子でいるのって、むしろ健康だと私は思っていたりもする。

物を投げてよこしていたYちゃん、いつの間にか私の目を見てそっと返してくれるようになっていた。

いってらっしゃい!って私が手を振ると、

「行ってくるー!」とふたりが笑顔で手を振り返して、笑いながら駆け出して行く。

とても眩しい。

 

 

 

裁かずにいて、良かったって思う。

彼女たちが私を受け入れてくれたのがとても嬉しい。

何かをお伝えするなら、まずは仲間にならなきゃ始まらないのは、本当だ。

どんなときでも、どんな子でも、どんなことをしても、私はその子の味方でいよう。