なつやすみのペンギン

7月の末は仕事が忙しく、氷ノ山への合宿行事にも参加して、バタバタの毎日が過ぎていった。

8月の頭から昨日の夜勤までは連休をもらって、家族との夏休みを過ごした。

 

母が数日泊まりに来てくれた。子どもたちと一緒の賑やかな生活だった。

それとは別に、父と父の奥さんも旅行に来てくれて、子どもたちと一緒に食事に行き、私の家も見てもらえた。

私が離婚してから両親に子どもたちと会ってもらうのは初めてだった。

心配を特に口にしない父は、私のことも子どもたちのことも、ひどく気になっていたに違いない。

元気でたくましく生きている私たちを見て、少しは安心してくれていたらいいなと思う。

 

 

 

私はいつも、大きな波がふりかかってくるときに、考えて考えて考え抜いた結果、

ひとつの道を選ぶ。

この先に何があっても行ってみよう、と決める。

別れ道は無数にやってくる。そしてどの道を選んでも、同じように私にはどうにもできない大きな波がふりかかってくる。

だから本当は、どれを選んでも同じなのだ。

 

でも、私の周りの人たちは、

そう、今生での一番長いおつき合いの両親から始まり、たくさんの友だち、先生方、この春に出会った職場の人たちまで、

私とつき合ってくださる私の周りの人たちは、みんな、私が選ぶ道を、驚きや心配を抱いて見守ってくださる。

「わざわざそれを選ばんでも…」って、今までどれほど言われてきたかわからない。

特に両親からは、溢れんばかりの愛情から、もっと効率の良い、もっと楽なものを選びなさいなと言われてきた。

「でもこれがいいの!」と頑固な私は、

周りへの反抗というわけではなく、周りの忠告はもっともだとわかりながら、どう考えても私にとって不都合が生じるであろうものを選んできた。

好き嫌いとはまた別の価値判断で選んできた。

実際、楽な道はなかった。

自分はバカだなとは何度も思ったが、その選択が誤っていたとは、未だにどの選択についても思ったことがない。

 

それは、周りの人たちが、いつも愚かな選択をする私を応援してくださり、様々な形で手をのべて、私を助けてくださったからなのだと

昨日、わかった。

父に、この棚は頂き物で、この本棚も頂き物で、この家電はまた別の友だちの車で買いに行って運んでもらって、引越しも色んな人に手伝ってもらってね、と、小さな我が家を案内しながら、

今の生活を始めるにあたってだけでも、本当にたくさんの方たちに助けてもらったことを実感した。

そしてもっともっとたくさんの方たちが、私の今の生活について、心配してくださり、何かあったら声をかけてねって言ってくださり、どうしてますか?と尋ねてくださる。

この上なく、幸せな人生だと思うのだけど。

いえ、心配させたいわけではないんですよ、本当に。

ごめんね。でも、本当にありがとう。

 

 

 

そこそこゆとりのある家に生まれて、愛情たっぷりに、何不自由なく育ててもらった。

「無理しないでも入れる短大にでも行って、バイトしたりして遊びながら、いい人見つけて結婚して、うちの近くで暮せばいいのよ。あなたはそういう選択だってできるんだよ。」

って、高校時代、母が言ったことがある。

確かにね、と私は思った。でもそれは嫌だ、と私は言った。

「そう言うと思ったけど。でも、そういうこともできるんだって知らんのかなと思って一応言ってみた。」

と母は言った。

確かに知らんかったよ。あなたに育てられたんですから(笑)

 

 

 

7月の末、とても大切な方に、どうしておられるかなと思って、と声をかけていただいた。

とてもとても嬉しかった。

その方もまた、新しい道を歩み始めておられた。

いつまでも、生きている限り、新しい道を選ぶことができる。新しい人たちと出会うことができる。私を変えていくことができる。

とてもとても勇気づけられた。

そして、変わらないその方の心のこもったお菓子を、この夏休みに私は、子どもたちと母と共に食べることができた。

そのクッキーの名前は、「なつやすみのペンギン」。

ユーモアにあふれて、美しい物語が、そこにもここにも、続いている。新たに始まっていく。

 

 

 

職場の庭で、夏野菜が次々と実る。

夜勤明けの今朝、よかったら持って帰ってくださいね、と先輩職員さんが言ってくださった。

利用者さんたちに対して本当にあたたかい眼差しで接しておられて、私に対してもいつもあたたかく声をかけてくださる先輩。

掃除も、水やりも、どんな小さな仕事も、丁寧に、心を込めてしておられる素敵な方だ。

この方ばかりでなく、私の事情はみなさんご存知なので、みなさんがそれぞれに、

週末は子どもさんたちとゆっくりできましたか?と聞いてくださったり、

遠いところからの通勤大丈夫ですか?と気にかけてくださったり、タイミングが合えば送ってくださったり、

私は本当に周りの方たちに恵まれて、助けていただいている。

 

 

手渡してもらったミニトマトと小さなシシトウは、朝日を浴びてキラキラ光っていた。

今晩、子どもたちと一緒に食べよう。