借り住まい

残っていた雪も消えた。日中はとても暖かくなった。

3月でも時々雪が舞うこの地だけれど、今年はこのまま春になるんだろうか。

今日は上着を着ないで、子どもたちと公園に出かけた。

1か月前あんなに凍えながら教習所に通っていたのが、嘘みたいだ。

 

この家に住み始めてもうすぐ8ヶ月になる。

おそろしい速さで季節が飛んでいく。

私の身には多くのことが起こったけれど、この家は私ひとりで居ても、心からくつろげる場所だ。

快適であるから、というだけではなくて、ここは心から私の望んだ暮らしを作れた、初めての場所だと思う。

子どもたちも、友だちも、くつろいで過ごしてくれる。

部屋の状態が心を表すのであれば、今私はとても落ち着いているんだろうなと思う。

 

この環境を作る手助けをしてくれた仲間が私にはたくさん居て、ありがたい。

この毎日は当たり前のものではないと感じる。

この気持ちをいつも抱いて生きていられたらいいなと思う。

 

 

 

『銭天堂』という不思議な駄菓子屋の本に子どもたちがはまっている。

1話につきひとつの、願いを叶えてくれる不思議なお菓子が出てくる。

探偵物のような、というかドラえもんのような構造になっていて、アイディアが尽きない限りは話が永遠に続けられる仕組みになっている。現在16巻まで出ているらしい。

悩みや願いを抱えた人が「銭天堂」に導かれてやって来て、そこで不思議なおかみからお菓子を買って、そのお菓子の効能と買った人の行動によって、事件が起きたりいいことが起きたりする。

買いに来る人(その話の主人公)が、幼稚園児からおばあさんまで、年齢が幅広いのが変わっているところだと思う。

2人が学校の図書室で借りてきては読んでくれと言うので、私もずいぶん詳しくなった。

ゾッとする話も多いのだけど、時々大人の恋愛の話も入っていたりして、

そして子どもたちがそういう話を好んで読んでくれというのが面白い。

 

今日はひとり暮らしが寂しい女の人の「おもてなしティー」という話を読んだ。

2人分のお茶を淹れたら、素敵なお客さまが現れて、楽しいお茶の時間を過ごせるというもの。

お母さんはどんな人に来てほしい?と聞かれて、あなたたちに来てもらいたいなって言うと、

長男に、学校の授業中はやめといてね、と笑われた。

次男に、お母さんは寂しくないの?と聞かれた。

週末に2人に来てもらえるから寂しくないよ、と答えた。

2人とも、満足そうに頷いていた。

 

来てもらうたび、仲間になっていく気がしている。

私の気のせいではないように思う。

彼らも、ここが第二の家だと思ってくれているようだ。

何が起こるかわからないけれど、私たちは大丈夫だと思えている。