ひつじ書房から

今日はコーラスの練習と、色々雑用の日。


夕方、次男と安野光雅さんのかくれんぼの絵本『もりの絵本』で遊んでいたら、

前後不覚で眠り込んでしまった。

次男が私にひっついていて、とても心地よかった。

気づいたら次男は長男と一緒に賑やかに遊んでいた。


その後急に静かになった。


長男が「お母さん、これ木の板みたい?」と持ってきたものをよく見ると、

色を塗って木目が描き込まれた段ボールだった。

「これしゅんすけと一緒に作ったんだよ!ドールハウスの扉にするんだ。こっちはドアノッカー」

彼らは信じられない物を作る。


昨年の4月ごろ、長男は、竹串をカッターで削いで、小さい人形用の曲木の揺り椅子を作っていた。

その人形も、というか小さなネズミのぬいぐるみも、長男の手作りだった。

従姉妹へのプレゼントの、白ネズミ、ミス・ビアンカドールハウスだった。

天蓋付きのベッドや、絹のクッションや、書き物机、庭の噴水など、そして親友のバーナードのぬいぐるみも。



ミス・ビアンカの冒険シリーズは、私が小学5年生のときから大好きな本だ。

全7巻を誕生日に祖母に買ってもらったのだった。

ひつじ書房」という、数年前にもうなくなってしまった子供の本屋さんで、祖父母や両親によくお誕生日などのお祝いの本を買ってもらっていた。

緑の看板だった。こじんまりした、木の扉の店だった気がする。

長男のお誕生日のお祝いに、父が絵本を買ってくれたこともあった。


ひつじ書房の焦茶色の本棚の上の方に、ひときわ目を惹く箱があった。

エメラルドグリーンと白と桃色のストライプの箱で、可愛らしく上品な白ネズミの絵が描いてあった。

私はいつも2、3冊買ってもらっていたのだけど、これはハードカバーの7巻セットだった。

こんな贅沢してはいけないよねと思いながらも、

ミス・ビアンカの箱から目を逸らせず、その場から離れられないでいた。

祖母は、何が欲しいか決まった?と私に尋ねた。

「あのね、これが欲しいんだけど、だめだよね。だから、この中から3冊ぐらい、いい?」

「これ?でもこれ全部そろってるんでしょ?箱も素敵ね。」

「うん。」

「いいよ、これにしましょ♪」

「いいの?」

「いいよ。いいのが決まってよかったわあ。」

「ありがとう!」

ひつじ書房の小柄なおばあさんが、いいですねえと呟きながら紙で包んでくれた。


その後、こじんまりした喫茶店に入って、祖母と私は一緒にケーキセットを食べた。

もちろんケーキは分け合って、半分ずつ2種類食べる。

食いしん坊の祖母だから。いつも美味しいものを食べさせてくれた。

私はどんな話をしていたんだろう。

私はいつも祖母とおしゃべりしていた。

際限なく、ずっとずっと。

学校のことだったのかな。家でのことだったのかな。

ああそうだ、友だちのこととか、本の話とか、自分で書いている物語のこととか、好きな男の子のこととか。

私が喫茶店でおしゃべりするのが大好きなのは、祖母に教えてもらった楽しみなんだな。


いつの間にか早期回想の世界にとんでしまった。

あたたかく、幸せな早期回想だ。



今、私を作ってきた本たちは長男と次男のものになっている。

一緒に読んで楽しんできたし、もう次男が一人で読める本も増えてきた。

ひつじ書房で買ってもらった本、ひつじ書房で見かけた本たちが、私と子どもたちを作っている。

その本たちの世界を、彼らは工作という方法で自分たちの世界として作っていく。

こんな楽しみ方もあるんだと、いつも驚かされている。