黙ってみる

今日は夜に新しく立ち上げるアドラー心理学のオンライン勉強会の準備会がある。
いくつ目の勉強会なのかもう数えていない。
すべての勉強がつながって、もっと勉強したいことが出てくる。
やるべきことは進むほどに増えていく。
そういう毎日がとても新鮮で刺激的で、楽しい。

とはいえ、実践も頑張りたいので、
私にとってはひじょうに勇気を必要とすることだが、
自助グループ、パセージ、カウンセリング、それぞれの現場で精一杯やっていこう。

 

 


今日は家庭での実践の話。
年長の次男は、幼稚園が大好きだ。
早くに行くとたくさん遊べるので、早く行ける日はたいへんにご機嫌がよい。
反対に、寝坊したり用意が遅くなったりして
開始時刻の9時に間に合わなくなりそうになると、ひじょうに機嫌が悪くなる。

徒歩で行くと、20分かかる。
バスだと、10分かかる。ただしバスは8:28と8:48しかない。
このことは次男もずいぶんよく理解してきている。

 

先日は、朝は早かったのだけど、余裕かましすぎて、朝ごはんの後、準備せずに遊び続けていた。
8:10になったら用意するので教えて下さいと依頼されていたので、お知らせしたら
「もう少し遊ぶ〜」
「いつ準備始めるの?」
「あと5分したら教えて下さい」
「はーい」

「 8:15だよ」
「もう少し遊ぶ〜」
「いつ準備するの?」
「あと5分したら教えて下さい」
「はーい」

「8:20だよ」
「はーい用意します〜」
と次男は返事をしたけれど、そのまま遊んでいた。
「8:40ですけども…」
「うわーもう9時に間に合わないよ〜うわ〜んうわ〜ん!!」
と泣き叫び始めた。
そらそうやがなと思いながら、私は黙っていた。

 

いつもはここで、陰性感情を持って様々なことを私は言っていた。
そうやっているとどうなると思いますか? とか
急げば間に合うと思うよ!        とか
なんとかパセージ的な対応をしてみようと努めていたけれど、
それでも陰性感情はあったし、次男を動かそうという動機に基づいていた。
次男が自分で考えて適切な行動を選ぶということを目標に据えてはいなかった。
だから次男は、こういう場面で泣き叫んで、誰かなんとかしてくれ〜!って依存的な行動をするんだろう。
彼の不適切な行動は、私の積んできた不適切な働きかけの結果である。

そんなことに思い至ると、
私は私の支配したいという執着を手放さなければ次男は自立に向かわないのだと、
もう何百回目かわからないけれど深く納得した。
それで、黙ってぼーっと次男を眺めていた。
彼はどんな行動をするんだろう?

 

「うわーん間に合わないよ〜うわーんうわーん!!!」
とわざとらしく泣き声をあげながら、
服を着替え、ハンカチをポケットに入れ、靴下をはいて、鞄の用意をして、帽子をかぶり、
「9時に間に合う?」とジャンパーを着ながら私に尋ねた。
いや、泣かんでええやん!それ全然いらん過程やん!立派にご自分のことできますやーん!
と思ったけど何もツッコまず、
「急いだら間に合うと思う!」と答えて、2人で早足で出かけた。

「バスなら間に合うけど、どうする?」
「うわーんバスなら9時に着いちゃう〜」
なんで泣くねんと思いながらも口には出さず、「そうだね9時に着くね。」
「だったら歩く!」
「歩いたら9時に着けるかどうかわからないよ。」
「急いで9時より前に行けるようにする!」
「わかった。じゃあ歩こうか。」
「うん!!」

次男はたいへん早足で、途中走ったりしながら、目を輝かせて進んでいった。
幼稚園の近くのバス停に来た時、8:48発のバスが到着したところだった。
それを見て次男、糸が切れた。
「あ〜9時になっちゃう〜!うわーんもう幼稚園に行きたくない〜!!」
もう幼稚園見えてるんですけど…さっさと歩けばいいやん!めんどくさいなあもう!と思ったが、
この後どうなるんだ?という方に意識を集中させ、私は黙っていた。
「もう遅くなっちゃった〜早く行けないんならもう幼稚園行きたくない!うわーんうわーん!」
と言いながら次男は歩き続けていた。
次男はぼやき芸やな、いつまでこれを続けるんだろうかと思いながら黙って私も歩いた。


私の先を歩いていた次男、私が反応しないものだから、だんだんと歩く速度を落としてきた。
とうとう私が追い抜いた。
次男はぼやきながら後ろをたらたら歩いている。
そのまま私が門に着いてしまった。先生にご挨拶する。
「おはようございます」
「おはようございます。あれ?しゅんちゃんは?」
「早く来たかったのに準備が遅くなっちゃって、すねてるんですよ 笑」
「あはは。あ、ベンチに座ってますね。気持ち落ち着けてるんでしょうね♪待ってますね。」
「ありがとうございます!そういえば…」
私が次男を気にせず先生とおしゃべりしていると、次男はベンチから立ち上がり、走ってやってきた。
私をぽーんと叩いて、幼稚園に駆け込んでいった。
「いってらっしゃい!」という私は無視して、
「しゅんちゃん、おはよう♪」
「おはよ」、と先生には低い声で答えていた。

「ちゃんと自分で切り替えられましたね〜♪」
「ありがとうございます。」
どんなときでも子どもの適切な側面を見てくださっている先生方に、本当に感謝している。


少し気になっていたのだけど、次男はにこにこして幼稚園バスから降りてきた。
いつも通りご機嫌な午後を過ごした。
そして次の日は、準備をすませてから遊んでいた。
毎日毎日というわけではないけれど、それは私だって同じだ。
学んでいても適切な行動を選ばないときだって多々ある。
でも、それは別の問題だと思う。
次男は、自分の準備とタイムスケジュールの関係について、よいことを学んだのではないかと思う。
これまで、その学びを私が妨げていたんだろうと思う。