焼き林檎の誕生日ケーキ

今日は1日お母さん業の日だった。

次男のお誕生日だったので、昼はオムライス、夜はハンバーグという

私にとってはかなり手間のかかるリクエストメニューを作るミッションと、

幼稚園の納涼祭がコロナ対策のため時間差で開催のため、

番役と子どもたちを連れてのお客さん役とで、2回幼稚園に行くというミッションとが重なり、

けっこうなハードスケジュールだった。

 

具沢山の肉と野菜の味噌汁どーん!だったら、3食それで間に合うので、

普段の私の手抜き加減はたいへん効率的だと思った。

そして3食(ひどければ5食ぐらい)同じ食事が続いても、

文句も言わずに食べてくれる家族に感謝した。

 

 

数日前、次男は頂き物のお菓子を食べて、急に唇が腫れて、

アレルギー反応が出てしまったので、あわてて病院に連れて行った。

小さい頃は牛乳のアレルギーがあったのだけど、検査して、もう大丈夫といわれていた。

とはいえ、普段の気管支喘息の予防の薬が終わったところだったので、

疲れが出てくるとアレルギー反応が出てしまうのだそうだ。

外は暑いし、冷房も体がだるくなりがちだし、確かに昼寝しがちだった。

ありがたいことに、いつもの薬を飲んだらすぐに治まった。

それで、いつもの薬を飲み続けることと、

生物やアクの強い食べ物は気をつけてくださいと言われて、ほっとして帰宅した。

しかし、誕生日ケーキのことが問題になった。

 

ずっと前から、生クリームの乗ったケーキを注文してくれと頼まれていたのだけど、

今、生クリームを食べるのはちょっと賛成できないなあとお伝えした。

「お誕生日ケーキ食べられないのか…」としょんぼりした次男に、

「いや、生クリームとかを使っていない、火の通ったケーキなら大丈夫だよ!」

と長男が言ってくれた。

「チーズケーキとか、ガトーショコラとかなら大丈夫じゃない?」と。

確かに、大丈夫でしょう。しっかり焼いてあるから。

でも次男はすねてしまっていて、「そんなのはいらない!」とソファーに突っ伏した。

「じゃあ、お兄ちゃんがケーキ焼いてあげるよ!」と長男。

がばっと跳ね起きた次男、「それなら食べる!」。

「じゃあどんなのがいいかな?」

「フルーツケーキ!」

「でも、生物やめといた方がいいんだよね。」

「じゃあいらないよ!」

「…焼き林檎は?」

「焼き林檎のケーキ!」

「ちょっと待ってね、焼き林檎の作り方見てみるから…。

 あー、これだったら作れないな。」

「じゃあもういい。」

「待って、別のレシピあったはずだから。

 あった!これなら、ケーキ焼いて、それから焼き林檎焼いて、

 後でケーキに乗せたらいいと思うよ。」

「じゃあ作って。」

「いいよ!」

「ありがと!」

長男4年生、すねる弟を見事勇気づけてくれた。

 

 

そして今日、長男は昼食のオムライスのふわふわの卵を作ってくれて、

次男をたいへん喜ばせた。

昼食後、私が店番に出かけるときにケーキを焼き始めた。

私が帰宅すると、ケーキを冷まし始めていて、

今から焼き林檎を作りまーす、と言って作り始めた。

リンゴを切っている長男の横で、私はハンバーグの下ごしらえをした。

 

 

3人で納涼祭に出かけた。

暑かったけど、久しぶりにたくさんのお友だちや先生方に会えて嬉しそうな次男。

長男はずっと次男について、保護者をしていた。

次はどうしたい?とか、あれで遊んでみる?とか、長男が尋ねて、

次男は、次はあれだー!とか、それはしない、こっちに行く!と応えて、

いいよー!と、長男はずーっと付き添っていた。

 

家ではいつも、

「ちがうよ、こうだよ!お兄ちゃんに貸してごらん!ちょっとでいいから!そうじゃないよ、ほら!」

「やめてー、もう、返してよ、やだーやだー!」

って声ばっかりを聞いているように思っていたけど、

どうやら彼らはうまくやっているらしい。

横暴なお兄ちゃんと虐げられる弟物語のときもあれば、

優しいお兄ちゃんとわがまま放題の弟物語のときもあるんだ。

そこに私の入る余地はない。

ああそれから、怠け者のお兄ちゃんと働き者の弟物語もある。

 

 

夫が迎えに来てくれて、みんなで帰宅して、

無事にハンバーグとケーキの用意もできて、

夫の買ってきてくれていたジンジャーエールで乾杯をした。

スープが次男のお口に合わなかったり、

ケーキの食感が不思議だったり、

ジンジャーエールが辛口すぎてむせたり、

完璧なディナーではなかったけど、

次男が生まれてきたことを喜ぶ気持ちがいっぱいの食卓だった。

 

おやすみを言ったとき、6歳おめでとうってもう一度言ったら、

とても誇らしげに、うん、ありがとうって次男が応えた。

大きくなるっていうことは嬉しいことだね。

 

もっとこうしたらいいのに、もうちょっとこれがなければいいのにって、

私の脳裏を色々な期待がよぎるけれど、

多分次男は次男なりに、自分で色々なことを学んで、自分の良い使い方に気づいていってくれるはず。

私は次男の良いところをたくさん伝えていきたいと思う。

アレルギーのことをちゃんと理解して、すぐに私の指示に従ってくれて、

その後も感情的にならずに自分の食べたいものを我慢できたのは、

素晴らしいことだと思う。

彼はものすごいわがままを発揮することがあるけれど、

きちんと場をわきまえることができていると思う。

 

 

私は、長男がこんな風に成長するとは想像できなかった。

こちらの期待を求めても、関係は悪化した。彼は不幸になっていった。

だからそういう働きかけをやめて、

努めて長男の良いところをたくさん伝えてきたことが、

多分長男の本来の良さを育てたのかなと思う。

それで、自分の良い使い方を、

家族のためにみんなのために、どうやって自分を役立てられるのかを、

自分で考えて行動できるようになったんだと思う。

手先が器用で手間をおしまず、創意工夫にあふれる長男にとって、

お料理というのは素晴らしいツールだね。

今回、次男を本当に勇気づけてくれた。とてもとてもありがたかった。

 

 

みんなにとって、お互いの成長を実感できた日だった。

私たちが4人家族になったお祝いの日だ。