練成講座に行くことを夫に相談して、行ってもOKと決まったときは、
今よりも新型コロナのことは落ついていた時期でした。
ここ10日ぐらいの間に状況が変わってきたので、
関東方面にお住まいで練成講座を欠席された方々もいらっしゃいました。
我が家では、出かける前日の夜に、夫からお願いをされました。
私が講座から帰宅してから2週間は、私は1階の和室で寝起きして、
2階の子ども部屋や寝室には極力入らないこと。
そして夫と子どもたちと、なるべく距離を保って接触しないこと。
夫は今週の木曜日からの連休で実家に帰省する予定なので、
万が一私が無症状感染していたことに気づかず、夫も気づかず万が一感染し、
両親に万が一があってはいけないから、ということでした。
それで、わかりましたと私は約束をしました。
出かける日の朝、夫は子どもたちを呼んで、
「お願いしたいことがあるので聞いてくれますか?」と言いました。
「なあに?」と子どもたち。
「お母さんは今日からお出かけだけど、日曜日に帰ってきたら、
もしも病気の菌を持ってきてしまって、あなたたちにうつしてしまったらいけないから、
しばらくはお母さんとはくっつかないでくれるかな。
お父さんも来週の木曜日からおじいちゃんおばあちゃんのところに行くから、
お母さんと距離をとって過ごすから。
それから、和室は今はあなたたちが寝ているけど、
日曜日の夜からはお母さんが一人で寝るから、子ども部屋で寝てくれるかな。」
「はーい。」と長男。
「うわーんかなしい〜。でもいいよ。」と次男。
「ありがとう。お母さんもひっつきたいけど、がまんするね。」
「うん。じゃあ今ひっついとく〜。」
いつの間に夫はパセージを習得したのでしょう。
子どもたちも、夫のお願いをよくきいてくれて、びっくりでした。
練成講座の旅の3日の間、
夫に連絡をする度に、
また感染者数が増えただの、新幹線の売り子さんが感染しただの、
気をつけてねと散々言われました。
「はいはい」と聞いていましたが、内心うんざりしていました。
昨日の夜、地元の駅にあと1時間ぐらいで到着というときに、
「駅まで迎えにきてもらえる?」と電話すると、
「迎えに行くのはいいですよ。
でも、帰宅したらすぐにお風呂に入って、洗濯をしてください。」
と言われました。
「はい。わかりました。
…でも、それなら車にも乗らない方がいいかな?やっぱり私1人で帰ろうか?」
夫、ちょっと慌てた様子で
「いや、それはいいですいいです、迎えに行くのはいいから。気をつけて。」
と言って、迎えにきてくれることに決まりました。
正直、なんでここまでばい菌扱いされなあかんねんと、陰性感情を抱きました。
私だって、帰宅したらすぐにお風呂に入ろうと思っていたのに。
そのために洗面所に着替えもちゃんと準備してから出てきたのに。
いっつも夫の行動基準は、実家の父母のことだよねって。
私が自分で正しい判断ができないって思ってるんじゃないの?って。
私のこと認めてもらえていないって、私は悲しくなっているようだと思いました。
でも、練成講座でカウンセリングを受けて学んだことと、
この出来事には冗長性があると、完全に気づきました。
夫は、私の想定する範囲よりも、もっと広い視野で物事を考えているかもしれないということ。
私の想定する範囲は、限られているということ。
それから、カウンセリングをして、先生方先輩方にご意見をいただいて学んだこととも関係があると気づきました。
人への尊敬が足りないのは私の方であること。
ここは、はい、わかりました、と私が言って、これで良かったのでしょう。
私はできる限りのことをしました。
夫の心配を理解しようと努力して、
夫のために、車に乗らないで帰るという提案もしてみました。
夫も私の気持ちはわかってくれたみたいでした。
それに、優しい夫は、自分の心配と私のことを秤にかけて、
私の役に立つことの方を選んでくれました。
うん、これはちゃんと競合的な関係に陥ることなく、踏みとどまれているようです。
ただ、夫は駅で私の顔を見てからも、ばい菌扱いをするであろう。
それは仕方のないことです。
夫に会えて嬉しくていっぱい話そうとする私を、
夫はあまり嬉しそうな顔では迎えてくれないでしょう。
早く車に乗りましょうって、早足で先先歩いて行くでしょう。
それも仕方のないことです。夫はいつもそうだから。
私はそのことに、いつものように陰性感情を抱いて接しますか?
自分の思い通りにならない夫を裁いて、かわいそうな私をしますか?
それとも?
練成講座に行かしてくれたことを感謝しよう。
子どもたちを預かってくれたことを感謝しよう。
迎えに来てくれることに感謝しよう。
夫は責任ある立場なのです。
実家の家族にとっても、職場にとっても、もちろん、私たち家族にとっても。
だから、私や子どもたちの行動を制限するのです。
それはとても良いことだと思います。
では、私が協力できることは、夫の心配をなるべく少なくすることです。
実はその気になれば、夫よりも私の方が衛生面には細かいのです。
私はちゃんと除菌用アルコールスプレーも携帯しているのです。
夫の目の前で、鞄と私にスプレーをふりかけてみよう。
嫌味にならないように、ちゃんと説明をして。
それから、鞄を車のどこに乗せたらいいかも聞いてみよう。
夫の気に入ることは何なのか聞いてみよう。
夫は私を嫌な目にあわせたくて言っているんじゃなくて、不安があるから言っているのだから、
その不安を減らしたいという私の気持ちを伝えれば、夫の緊張は減るでしょう。
そうすれば、私たちは、物理的距離を保ちながらも仲良く過ごすことができるはず。
距離を保つために、夫は私と一緒にいようとはしないだろうけれど、
それはお互いに心を離したいからではない。
そのことを、ちゃんと夫に伝えられるようにしよう。
そんなことを考えているうちに、陰性感情は収まっていました。
しっかりマスクをつけている夫の表情はあまりよくわかりませんでした。
予想通り、かなりの距離を空けて私より随分先を早足で歩いていきます。
鞄に除菌スプレーかけてから乗せるね、私にもかけるから、と言うと、
びっくりして、あ、わかったと言いました。
鞄どこに乗せたらいい?と聞くと、
じゃあトランクに乗せてもらえる?と言いました。
バカみたいだなと思いながらも、
でも、ちゃんとバカになろうと思って、
駐車場で鞄と自分にシューシュースプレーをふりかけて、
迎えに来てくれてありがとうと言って乗り込みました。
いえいえ、お疲れさま、と、緊張度の下がった様子の夫は言いました。
帰宅したら私はすぐにお風呂に入って、
着ていた服と鞄の中の服などは、全部大きなビニール袋に入れて、口を縛りました。
「洗濯はもう今日は疲れててできないけど、こうやって全部まとめたから。
明日、誰もいないときに袋を開けて洗濯するね。」
と言うと、
え、ありがとう、とびっくりした様子で言ってくれました。
そうなんです、私、潔癖的にやろうと思えばけっこうできるんですよ。
ちなみに私の触ったスイッチなども、全部アルコールスプレーを吹き付けて拭き取りました。
これは夫には報告しなかったけど。
どっちかというと、潔癖的な自分がしんどくて、ゆるめていこうと私はし続けてきたのです。
コンクリートやビニールタイルに裸足で触るのとか、
べたべたな物を触るのとか、
湿り気のある生き物に触るのとか、
やっぱり今も生理的に苦手なものがあります。
乾いたものならけっこう大丈夫になったかな。
私は根気がないから、完璧には潔癖にできなくて、
それで片付けが苦手なのもいい感じに作用したのか、色々目をつぶることにして、
カオスな夫と子どもたちとの生活にも慣れたのでした。
家族と物理的に距離をとっての生活がしばらく続きます。
でもそうやって私が夫の気持ちを理解して行動してみると、
心理的な距離は近づいたかもしれません。
それから、距離を保つということは、尊敬するということともリンクする行動かもしれません。
尊敬すべき人には、馴れ馴れしく近づかないものです。
そう思えば、不用意に夫のすることを裁かないでいられるような気がします。
子どもたちも私に近づかないようにがんばってくれています。
ここまでして、本当にバカみたいと思いますが、
ここまでしなくても、私はどうせバカみたいなことを心配したり、
バカみたいなことを怒ったり悲しんだりして暮らしているのです。
何をしてもバカみたいなら、夫にバカみたいに協力してみようと思います。
そのうち夫は我が家の緊急事態ルールを解除してくれるでしょう。